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告発のとき [タイトル:カ行]

In the Valley of Elah (2007年)
監督:ポール・ハギス
出演:トミー・リー・ジョーンズ、シャーリーズ・セロン、スーザン・サランドン
valleyofelah_2.jpginthevalleyofelah.jpg
イラクから帰還した息子が惨殺死体で発見され、その真相を探ろうとする父親の姿を描いた実話を基にした映画。
オスカーウィナーが4人も絡んだ映画にも関わらず、本国アメリカでの興行成績は散々だった作品で、本作に限らず、「勇者たちの戦場」「Rendition」「Stop-Loss」などイラク戦争を題材にした映画は軒並み悪い興行成績だった。これは、アメリカで連日のようにTVで放送されているイラク戦争の話をお金を払ってまで観たくはないという国民感情が反映しているからだと言う。
映画では、祖国の為にと父や兄に倣って軍に入った若者が平和の為にと派遣されたイラクで、軍の規律に従ったが為に子供を殺してしまったことがトラウマとなり人格が破綻してしまい、帰国後の悲劇が生まれる。確かに目を背けたくなるような不条理な話だが、イラク戦争に間接的に関わりながらも、その実情をよく知ることのない日本人には必見の映画と思われる。
セリフで多くを語るのではなく、登場人物の行動や表情で物語の核心をつく、P・ハギスの演出は説得力があり、また、昔気質の無骨な元軍人の父親を演じるT・L・ジョーンズ、男社会で軽く扱われながらも真実追求に妥協を許さない女刑事役のC・セロン、息子を失った母親の悲しみを少ない出番で印象的に演じたS・サランドンらのオスカー俳優らの力強い演技が物語を引き締め、ジェイソン・パトリック、ジョッシュ・ブローリン、フランシス・フィッシャーら脇役陣の存在も印象的で見応えがある。
序盤で国旗を逆さに掲揚していた外国人を諭して正しく直していた主人公が、ラストで敢えて逆さに掲揚し、それをテープで固定するシーンは正に現代社会を象徴しており、映画史に残る名シーンだと思う。

本作は決して誰かを告発しようという映画ではないので、邦題は内容と合っていない。最近は本当にこの手の邦題が多いが何を意図しているのだろうと疑問に思う。
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朱色会

コメントありがとうございます。

>観たくはないという国民感情が反映している
同意です。見たくはない=認めたくない
ということでしょう。
この国の上映が少ないのも少し気がかりです。

「帰還兵の問題」は、アメリカが関わった戦争全ての問題で、それは映画にもなっていますね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/Category:%E6%88%A6%E4%BA%89%E6%98%A0%E7%94%BB
『判っているのに止められない』ジレンマ。いつまでそれを抱えていくのでしょうか?あの国は。
by 朱色会 (2008-07-07 01:13) 

masktopia

コメントとTBをありがとうございました。
この映画はアメリカ国内では興行成績が伸びなかったのですね。
イラク報道に辟易している上に、実話のほうがメディアで先行しているのでは
興味が失せるのもわかる気がします。
でも、私はこの映画を通してリチャード・デイビス失踪事件のことを知ったので
hashさんのおっしゃるように、自分にとっては「必見の映画」の一つですね。
by masktopia (2008-07-08 00:40) 

てくてく

この映画、上映館少ないですよね。
雑誌で目にしたときから観たいと思っていたのですが、
近場では上映されません。
ポール・ハギスなので、もっと広く公開されると思ってましたが・・・。
DVDが出たら観ます!
by てくてく (2008-07-08 09:10) 

hash

murabosaさん、こんばんは。
nice!ありがとうございます。

xml_xslさん、こんばんは。
nice!ありがとうございます。

リックディアスさん、こんばんは。
nice!ありがとうございます。
by hash (2008-07-08 21:15) 

hash

朱色会さん、こんばんは。
イラク戦争では、ベトナム戦争とは違った形の問題が生じ、多くの映画で描かれていますね。
それらが、あまり日の目を見ないというのは残念な話です。
nice!&コメントありがとうございました。
by hash (2008-07-08 21:22) 

hash

masktopiaさん、こんばんは。
確かにTVで連日のように放送されているような悲惨な話を映画館で観たくないというのはわかる気がします。
逆にTVでは知ることができない日本では、もっと多くの人に見てもらいたいと思います。
コメント&TBありがとうございました。
by hash (2008-07-08 21:25) 

hash

てくてくさん、こんばんは。
仰るように上映している所が少ないようですね。
アメリカで当たらなかったこともあり、仕方のないことかもしれませんが残念です。
DVDが出たら、ぜひご覧ください。
nice!&コメントありがとうございました。
by hash (2008-07-08 21:29) 

ryoko

hashさん、こんばんは。
TBありがとうございます。
元記事はplayboyに出たそうですが、アメリカでは興行的にダメだったんですか・・・残念です。
戦争はやはり狂気、殺すか殺されるかのぎりぎりの状況が日々起こる状況で正常でいられるわけがないですよね。何かが壊れていくということを描いたすごい映画だと思います。
日本の国旗は・・・逆さになっててもわからんやないか!
by ryoko (2008-09-03 00:13) 

hash

ryokoさん、こんばんは。
コメント&TBありがとうございます。
戦争は所詮、殺し合いに過ぎないんですね。
帰還した後も、その悪夢から逃れられないとは、経験した人でないとわからないことですから、それがこのようにメディアを通して伝えられることは、とても重要なことだと思います。
by hash (2008-09-04 00:09) 

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