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ブレイブ・ワン [タイトル:ハ行]

The Brave One (2007年)
監督:ニール・ジョーダン
出演:ジョディ・フォスター、テレンス・ハワード
braveone.jpg
暴漢に婚約者を殺され、自らも重傷を負った女性が恐怖心を克服すべく取った行動を描いたドラマ
一見、「狼よさらば」などの私刑人についての映画にもみえるが、実際は似て非なる映画と言える。本作はあくまで犯罪の被害者について描いたドラマで、私刑人を描くのが目的ではない。T・ハワード扮する刑事のセリフにあるように、犯罪の被害者は立ち直れない者、いわゆるPTSDに苦しむ者が多いと聞く。J・フォスター扮する主人公も当初は外出することすらままならない。警察も当てにならない以上、自分の身を守る為に銃を手に取る選択をするわけだが、銃のような武器は持っていれば、使ってしまうのは必然となり、ここに銃社会の危うさが垣間見える。
日本も凶悪犯罪が増える一方で、その検挙率は低下しているようで、決してよその国の出来事とは楽観してはいられない、身近な恐怖がそこにある。配給会社のウェブサイトによると、“彼女の選択が許せますか”というアンケートが行なわれ、70%の人が“許せる”と答えたそうだ。世の中はおかしなもので、犯罪の加害者は弁護士やマスコミなどに擁護されるが、その被害者を擁護する者は意外に少ないらしい。こういった現状を考えると、この結果にも納得がいく。
映画では、主人公の行動がエスカレートしていく様子とその葛藤が丁寧に描かれ、その心情がDJとしての仕事や、刑事との会話を通じて吐露されており、現実味を帯びた作品になっている。
ただ、ラストシーンは少々、納得がいかない。敢えてフィクションであることを強調しているかのようで、興醒めしてしまう。もっと他の結末が考えられたと思うだけに残念である。


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和-nagomi

hashさん、初めましてこんばんは。“753”と申します。
ワタシも“ブレイブワン”観てまいりました!
なかなか扱いがデリケートな問題でしたので、それにジョディ・フォスター
がどういう結論を出すか興味がありましたが、どちらかというと
アメリカ的というか、ハリウッド的な着地点になってしまったと
思いました f^_^;)

ですがそこに至るまでのエリカの苦悩などについては、さすがの
ジョディ・フォスターでしたので、単純なワタシはカッコイイ彼女を
観れて満足しちゃいました ( ̄▽ ̄;

それでは初めてで長々とお邪魔するのも失礼ですので、本日はこの辺で。
またお邪魔させて頂きますね。
by 和-nagomi (2007-11-03 21:37) 

hash

753-nagomi-さん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
ハリウッド的なエンディングはともかく、いい映画でしたね。
ジョディ・フォスターは、こういう役が似合います。
これからもよろしくお願いします。
by hash (2007-11-07 01:01) 

オカピー

TB&コメント有難うございました。

>「狼よさらば」
僕もこの女性版と申しておりますが、あくまで構成が似ているという意味で、主人公の心理過程は全然違いますね。そもそも好戦的な男性と受動的な女性で同じはずもないわけです。
従って映画も途中まではその手続きに従って進むのですが、暗黒街のボスを殺す辺りから様子がおかしくなってきます。
これは良いとしても、面通しで真犯人がいたのに警察に任せない展開はヒロインの心理を追う作品としては全くの暴走で釈然とせず、最後の刑事の協力に至って、主題まで変わりかねません。
それまでが通りに文学的に彼女が立ち直る過程を表現したいのであれば、そこでじっとこらえて警察に一任するというお話しにすべきだったでしょう。

そもそも「今さらジロー」的な物語を現在に蘇らせた理由を考え、あの最後の刑事の態度を見ると、脚本家連中は底流にアメリカの9・11復讐戦争の擁護を据えたのではないかと感じてしまうわけです。
もしそうでないのなら、そんな誤解を招くお話を拵えてはダメですよね。

アイルランド人でテロリストの絡む作品「クライング・ゲーム」「マイケル・コリンズ」を作ったニール・ジョーダンが監督だから「擁護はない」という(僕への)紳士的反論についてはどう思われますか?
by オカピー (2008-11-15 03:10) 

hash

オカピーさん、こんばんは。
コメント&TBありがとうございます。
確かに終盤の展開はもう少し考えられたのでは?という思いはありますね。
その一方で、「告発の行方」「パニック・ルーム」「フライト・プラン」で悪と戦う女性を演じてきたJ・フォスターらしいとも思えます。
いずれにせよ、ハリウッド映画ですから、ラストでああなることは最初から決まっていて、それまでの受身の姿勢から、攻撃的な姿勢へ切り替える前のワンクッションとして裏社会のボスを殺害するエピソードを加えたというところではないでしょうか。

>紳士的反論
真意の程がよくわからないので何ですが、N・ジョーダンはJ・フォスターに乞われて監督を引き受けたみたいですから、9.11は意識してないと思います。
by hash (2008-11-16 01:20) 

オカピー

>真意の程がよくわからない

敢えて説明するほどでもないのですが、念の為。
ご存知のように記事の最後で「9・11事件後のアメリカ的戦略の擁護に見えて来る」と僕は書きました。その人の記事に対してはもっとはっきりと「脚本家たちにそういう狙いがあったのではないか」と書いたことに対し、

「ニール・ジョーダンはアイルランド人で、しかもテロリストよりでアメリカの対テロ戦争の擁護をしますかね?」

と彼は反論めかしたわけです。

僕はこの作品におけるジョーダンは完全に「やらされ仕事」と思っていますので、彼のアイデンティティは基本的に関係ないと思っているわけですが、先方は「ジョーダンのアイデンティティと作家性故にそういう映画を作らないはずだ」と言うわけです(発言者の真意)。

で、hashさんのお考えは僕と大体同じようなので、ひとまず安心した次第。
アメリカ映画は必ずしも作家主義に基づいて作られていない、ということをhashさんとの間で確認したかった、というのが本音です。アメリカ映画における映画監督の地位は伝統的に他国ほど高くはないですね。だから、時々ディレクターズ・カットというのが生まれます。
by オカピー (2008-11-17 01:57) 

hash

オカピーさん、こんばんは。
わざわざご説明ありがとうございます。
IRAとイスラム原理主義者は大枠で囲えばテロリストとなりますが、その実態は別物ですからね。
by hash (2008-11-17 21:10) 

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