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瞳の奥の秘密 [タイトル:ハ行]

El secreto de sus ojos (2009年)
監督:フアン・ホセ・カンパネラ
出演:リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル、パブロ・ラゴ、ハビエル・ゴディーノ
seacretinthereeyes.jpgelsecretodesusojos.jpg
今年のアカデミー賞で外国語映画賞を獲得したアルゼンチン映画で、20年以上前の殺人事件に関わった者達の忘れ得ぬ思いをサスペンス形式で描くドラマ。
1999年、退職した裁判所職員ベンハミンは二十数年前に自身が担当した忌まわしき殺人事件について執筆しようと思い立ち、かつての同僚で今は検事となったイレーネがいる元職場を訪れる・・・

殺人事件の全容を明らかにしていくことで、被害者の夫の執念とともに、ベンハミンのイレーネに対する秘めた愛を描き出すという二重の構成になっており、なかなか見応えがある。
しかし、あくまで主人公目線で展開する為、被害者サイドからの描き方が弱いせいか、サスペンス色が薄れ、その分クライマックスへの盛り上がりに欠けていたように思う。
逆に言えば、そのおかげでクライマックスそのものの衝撃は増し、印象深いシーンになったともとれる。

それにしても、この夫の執念は凄まじいものがあり、同時に興味深い選択であった。
つまり、死刑は残酷だから行ってはならないのではなく、犯罪者を楽にするだけの甘い刑だから行うべきでないという理論がサブテーマとして存在するのである。
この点が、州によって制度が異なり、賛否両論あるアメリカ人の心に訴えかけるものがあり、賞へと繋がったのではないかと思う。
日本でも現政権はどちらかと言えば、死刑反対のようであるが、その理由は主に前者にあるようである。終身刑の無い国で、残酷だからと言う理由で死刑制度が無くなれば、犯罪者予備軍の気を楽にするだけで、日本の治安が悪化するという懸念は杞憂だろうか。

話を元に戻すと、事件当時のアルゼンチンは軍事政権による政情不安、経済低迷が続き、政府とそれに反発するゲリラとの間の抗争が激化していたらしい。こうした背景を事前に知っておけば、作品の理解がより深まっていたであろうと自分の勉強不足を後悔。
ちなみに、本編とは関係ないことだが、大統領就任テレビニュースに犯人が写っているというシーンにおいて、あの女性大統領はマドンナ主演の映画で有名なエビータではなく、彼女の夫フアン・ペロンの後妻イサベル・ペロンだそう。

アルゼンチンと言えば、サッカーやタンゴが真っ先に思い浮かび、情熱的な人種なのかと思っていたが、本作の登場人物は皆、至って冷静で意外な感じがした。
たまには、違う国の映画を観るのも新たな発見もあって、いいものである。
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てくてく

外国語賞受賞作ですか。
とても気になりますね~。

映画を観ることでその国の情勢を知ることが出来る、
勉強になるというのも
映画を観ていてよかった、と思えることの一つですね。
by てくてく (2010-09-17 00:56) 

aneurysm

映倫が変な規制をかける場合も多いですが、
なんだかんだ日本は世界中の作品が観易い国だとは思います。

>日本の治安が悪化するだけという懸念は杞憂だろうか。

そこは永遠のテーマですよね。私は刑務所の維持費を考えれば
特定の犯罪は、どんどん死刑にすべきだと思います。
by aneurysm (2010-09-18 10:47) 

hash

てくてくさん、こんばんは。
そうですね。
映画を観て、初めて知ることも多いので、本当に勉強になります。
by hash (2010-09-18 23:56) 

hash

aneurysmさん、こんばんは。
確かに、よくよく調べると、数は少ないものの、いろいろな国の映画が公開されていますね。

>刑務所の維持費
終身刑の一番の問題点ですね。
日本の刑務所は比較的、過ごしやすいのも問題です。
大相撲を観ているようですし・・・
by hash (2010-09-19 00:04) 

coco030705

こんにちは。
これはなかなかよくできた映画だったと思います。
死刑が甘い刑だから、という発想がすごいですよね。
死刑をなくしたら、刑務所が囚人であふれかえってしまうんじゃないかという危惧もあります。

この映画はスペイン語がとても雰囲気を盛り上げていたと思います。
やはりその国の言葉で撮るのがいいように思います。英語はどちらかというと、情緒に欠け攻撃的なところがあるので……。
TBさせていただきまーす。
by coco030705 (2010-09-22 16:11) 

hash

coco030705さん、こんばんは。
>囚人であふれかえって
そうなると、ある程度の年月を服したら、釈放ということになり、改心していない犯罪者を野放しにする可能性も出てきますから、危険ですね。

>英語は
最近のハリウッドは非英語圏映画のリメイクが流行りですから、本作もあるかもしれません。
by hash (2010-09-23 22:04) 

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