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K-19 [タイトル:英数字]

K-19: The Widowmaker (2002年)
監督:キャサリン・ビグロー
出演:ハリソン・フォード、リーアム・ニーソン、ピーター・サースガード
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1961年、ソ連初の原子力潜水艦K-19の処女航海で実際に起きた放射能漏れ事故の記録を基にして作られたサスペンス。
1961年と言えば、ソ連人パイロットのガガーリンが人類史上初の有人宇宙飛行に成功した年である。ソ連はその前にも有人宇宙飛行を試みたが失敗したので隠蔽したという説があるようだが、この原子力潜水艦の事故の件はソ連が崩壊するまでの28年間は実際、秘密にされていた。
当時は、米ソ冷戦の真っ只中で、互いが世界の覇権を狙ってしのぎを削っていた頃であり、そうした背景を知ると、副官の時期尚早という意見には耳を傾けず、ソ連指導部がK-19のテストを急いだ理由がわかり、映画の理解度が増す。そもそも規格外の部品が使われた水漏れのする潜水艦で出航すること自体がかなり恐いことで、当時の共産主義政権が人命よりも国益を優先していたことがよくわかり、「未亡人製造船」などという別名がつけられるのも納得である。
最初は対立していた艦長と副官が危機に対処するうちに互いを理解し合うというドラマ部分はフィクションかと思われ、「クリムゾン・タイド」の展開に似ているのは否めないが、国益の為、任務を第一に考える艦長と乗員の人命を第一に考える副官という対照的なキャラクターのおかげで、事故の原因、発生、対処という流れがスムーズにわかりやすく描かれ、緊張感が増しているように思う。
また、原子炉を搭載しているにも関わらず、放射能防御服を積んでいないおかげで、乗員がほぼ無防備の状態で原子炉に入って、壊れた冷却装置を修理し、被爆する様子は下手なホラー映画よりもずっと痛々しく、核兵器の恐ろしさをひしひしと感じる。
「潜水艦映画にはずれなし」という説があるが、本作も決して例外ではなく、女性ながら骨太な映画を撮るK・ピグロー監督らしさがよく出ていると思う。個人的には、彼女が監督した「ハートブルー」や「ストレンジ・デイズ」はお気に入り作品なのだが、あまり大衆受けはしていないらしく、本作を含めヒット作には恵まれておらず、新作の話が聞こえてこないのは残念である。
40年も前の旧ソ連の出来事というアメリカにはあまり関係なさそうな話をハリウッドのメジャースタジオがよくぞ映画化したものだと思うし、アメリカン・ヒーローのイメージが強いH・フォードがソ連人艦長というのは違和感があるのは確かだが、逆に考えれば、H・フォードのような大スターが出演するから、スタジオも製作を認めるわけで、その結果、昔のソ連で起きた出来事を、遠い日本でも知ることができたということなのだろう。
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midori

スリーマイル島に続いてチェルノブイリに大きな原発事故があり、『危険な話』という本がベストセラーになった高校時代に、放射能については結構調べた覚えがあり、放射能の「見えない・臭いのない・実態の無い(ように思える)ものが、体の細胞を次々と破壊する恐怖」をなまじっか知ってるだけに、潜水艦乗りの任務の終わるのを恋人が故郷で待っているような若い隊員が、丸腰で原子炉の修理に飛び込んでいく姿は、本当に本当に怖かったです。

by midori (2010-12-19 17:11) 

hash

midoriさん、こんばんは。
古い記事へのコメントありがとうございます。
これが実話と思うと、本当にゾッとしますね。
奇しくも、今、国家機密暴露が話題になっているだけに、それが隠蔽されていたことに、またゾッとします。
by hash (2010-12-19 22:31) 

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